大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

水戸地方裁判所 昭和54年(わ)1179号 判決

本籍

茨城県土浦市中央二丁目八三一番地

住居

同県同市中央二丁目二番二〇号

医師

大野進

大正一一年九月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中村紘毅出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金八〇〇万円に処する。

右の罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、茨城県土浦市中央二丁目二番二〇号に居住し、同所において、大野産婦人科医院を経営しているものであるが、自己の所得税を不正の行為により免れようと考え、右医院の診療収入の一部を除外するため、自己の妻大野典子を介し、同医院の診療収入を把握するために刻印されているレジ・ペーパーに右収入の一部を刻印せず、更に、右作成されたレジ・ペーパーを破棄し、減額した診療収入を刻印したレジ・ペーパーを作り直すなどして診療収入の一部を除外したうえ、架空名義の銀行預金を設定するなどの方法で所得を秘匿し、

第一  昭和五一年分の総所得金額が五六四九万一一三〇円であり、これに対する所得税額は二七四七万八〇〇〇円であつたにもかかわらず、昭和五二年三月一五日、茨城県土浦市城北町四番一五号所在の土浦税務署において、同税務署長に対し、昭和五一年分の総所得金額が三六六三万三八七四円であり、これに対する所得税額は一四八八万六七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により正規の所得税額と右申告税額との差額一二五九万一三〇〇円をほ脱し

第二  昭和五二年分の総所得金額が六三六八万四五九六円であり、これに対する所得税額は三二二八万二〇〇〇円であつたにもかかわらず、昭和五三年三月一五日、前示土浦税務署において、同税務署長に対し、昭和五二年分の総所得金額が四三九五万八四七九円であり、これに対する所得税額が一九三八万七三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により正規の所得税額と右申告税額との差額一二八九万四七〇〇円をほ脱し

第三  昭和五三年分の総所得金額が六四五九万七九七三円であり、これに対する所得税額は三一九八万三九〇〇円であつたにもかかわらず、昭和五四年三月一五日、前示土浦税務署において、同税務署長に対し、昭和五三年分の総所得金額が四五五五万六一六四円であり、これに対する所得税額が一九六〇万五〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により正規の所得税額と右申告税額との差額一二三七万八九〇〇円をほ脱し

たものである。

(なお、各事業年度における実際の総所得金額及び税額の算定については、別紙1ないし9の修正損益計算書、別紙10ないし12の脱税額計算書記載のとおりである。)

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  大野典子の検察官に対する供述調書二通

判示冒頭の事実につき

一  大槻洋子、中沢なかの検察官に対する各供述調書

一  木村典に対する大蔵事務官の質問てん末書

判示第一、第二の各事実につき

一  増山久の検察官に対する供述調書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  大蔵事務官作成の保険診療収入調査書、分娩に関する自由診療収入調査書、中絶収入調査書、その他の入院・手術収入調査書、リング関係収入調査書、妊婦検診料収入調査書、文書料収入調査書、胎盤処理収入調査書、血液検査料収入調査書、事務交付金収入調査書、保険証を持参しない患者の診療収入調査書、休日診療委託料収入調査書、入院・中絶・リング等以外の自由診療分の窓口診療収入調査書、妊婦検診委託料収入調査書、賄関係調査書、施設検診手数料収入調査書、必要経費調査費、貸倒れ損失調査書、雇人費調査書、借入金及び支払利息調査書、措置法適用経費差額調査書、雑収入調査書、不動産所得調査書、譲渡所得調査書、事業主勘定調査書

一  土浦税務署長作成の昭和五四年五月一一日付証明書

一  被告人作成の答申書

一  林毅作成の答申書

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に該当するところ、情状によりいずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金刑については同法第四八条第二項により右各罪所定の罰金の合算額の各範囲内で被告人を主文第一項のとおり量刑処断し、右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により主文第二項のように被告人を労役場に留置し、なお、諸般の情状を考慮して同法第二五条第一項を適用して主文第三項のように右懲役刑の執行を猶予することとする。

(裁判所 藤野安次)

別紙1

修正損益計算書

(事業所得)

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

(事業所得以外の所得)

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

(総所得)

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

別紙4

修正損益計算書

(事業所得)

自 昭和52年1月1日

至 昭和52年12月31日

〈省略〉

別紙5

修正損益計算書

(事業所得以外の所得)

自 昭和52年1月1日

至 昭和52年12月31日

〈省略〉

別紙6

修正損益計算書

(総所得)

自 昭和52年1月1日

至 昭和52年12月31日

〈省略〉

別紙7

修正損益計算書

(事業所得)

自 昭和53年1月1日

至 昭和53年12月31日

〈省略〉

別紙8

修正損益計算書

(事業所得以外の所得)

自 昭和53年1月1日

至 昭和53年12月31日

〈省略〉

別紙9

修正損益計算書

(総所得)

自 昭和53年1月1日

至 昭和53年12月31日

〈省略〉

別紙10

〈省略〉

別紙11

〈省略〉

別紙12

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例